2018.05.31 I am here

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お久しぶりです。約3ヶ月ぶりですね。

感情がうつりかわり、芸術が生み出されるにはじゅうぶんな期間。

ひっそりと、ライターとして飯を食うために文章をしたためています。

某ウェブメディアに応募した文章を、ブログを読んでくださるみなさんに捧げます。

掲載してもらえるまで応募しつづけるので、あの素晴らしいメディアでみなさんにお会いできる日がきますように。

 

 

 

新幹線で岡山まで、そこから4時間半ほど高知方面へ向かう特急列車に乗り、最寄り駅から車で約1時間。父方の祖母が1人で住むその家は、いつでも景色の一部として静かに息をしている。

私が着くずいぶん前から帰りを待ってくれていて、「遠いところへよく来たね。疲れたろ。」と嬉しそうに笑いかけてくれる祖母のにおいは、自然に囲まれて真面目に生きる人のそれだ。どんなオーガニック素材もかなわないだろう。

 

「今回もよろしくお願いします。」仏壇に手を合わせる。

いつも笑顔の祖父と凛々しい曽祖父母が、わかってますよと言わんばかりに迎え入れてくれる。

誰にも言えない秘密も、罪だと感じている過去の出来事も、彼らだけは全てお見通しなのだ。何をよろしくお願いしているのか、いつでもわかってる。

 

祖母や彼らに会いにこの家へ来るのはもちろん、正直言って日常から逃れるためでもあった。

1人で遊びに来れるようになった高校3年生の頃からすでに感づいていたが、どうやら私は生きるのが下手らしい。

 

数年前、私は毎日消えてしまいたかった。

自分に完璧を求めすぎて、気付いたときにはもう、身動きがとれなくなっていた。自分を消したかったのは自分で、自分を苦しめていたのも自分。

 

でも、でも、どんな状況にも立ち向かうだなんてクソくらえだ。なんだって全部の壁を乗り越えなきゃならない?

 

走った。ツヤツヤ光る木々の煌めきに包まれて。運動神経が悪い私は、相変わらず走るスピードが遅い。それでも風をきって、無我夢中で。

 

ふと、自分の声がはっきり聞こえた。

“私は私を許して良い、生きてるだけで良いんだ。”

 

「頑張るだけじゃ意味がない。泣いても何も解決しない。辛いのは皆おんなじ。お前の代わりなんていくらでもいる。」毎日怒鳴りつけられて生きていた。他の誰でもなく、私に。もうこの声は聞こえなくなるんだ。

 

大げさでもなんでもなく、そのまま飛んでいけそうだった。

本当は飛んでいたのかもしれない。身体が軽くなるのが手に取るようにわかったから。

 

翼をそっと隠して食べたその日の夕飯は、祖母が作ってくれた煮物だった。心に染みたな。

 

味気ないコンクリートロードを走るだけじゃ、この心は解き放てなかった。自然が生み出す芸術が絶対に必要だった。人生において、芸術はとても重要な役割を果たすと実感した。

 

あの日の翼のまま、世界中を旅したい。まだ見ぬ芸術を求めて。

誰にも言えない秘密も罪も増え続けるだろう。それでも私は厚かましく命を燃やしますから、どうか見守っていてください。

この家に帰ってくるのはもう逃げるためではなく、豊かさを体に馴染ませるためでありたい。

 

いつか世界のにおいを身にまとい、自然に囲まれて真面目に生きる祖母にはかなわないなと笑うのだ。